経営や営業成績、業務の目標とその達成、顧客のエンゲージメントなど、企業活動にはデータはついて回ります。そのデータに基づき、戦略や意思決定、評価がなされますが、見方を変えると新たな気づきが生まれた、という経験はないでしょうか。数値データだけでは見えにくいものをグラフや図表を用い、ダッシュボード等で見やすくすることを「データ可視化」といいます。
データ可視化は、業務のデジタル化を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)にも大きく関連します。
本記事では、データ可視化の定義とメリットや、データ可視化がDXにどう貢献するか、データ可視化のプロセスについて解説します。
目次
データ可視化とは?
データ可視化とは、数値データだけでは確認しにくい事柄などを、わかりやすくグラフ・図・表などで表し「見える化」をすることです。デジタル化が進む昨今では、扱うデータ量も膨大となり、単に数字が並ぶだけの情報では、分析や考察に時間がかかってしまいます。社内外の貴重なデータを有効活用するために、データ可視化の重要性は高まっているのです。データ可視化は、データが語るさまざまな傾向や課題をすばやくかつ明確に見出すことを助け、業績などの向上に役立てられます。
DXとは?
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、IT・デジタル技術やデータの活用により、事業・経営上のさまざまな変革を起こし、市場競争力を高めることです。生産性向上やコスト削減などの価値だけでなく、顧客や社会のニーズを捉え、新たなサービスや価値提供を生み出すことを言います。
DX自体の詳細については、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご参照ください。
データ可視化がDXにどのように貢献するか
データ可視化は、データが語る現状や課題などをわかりやすく表すことができる点が特長です。一方、DXの目的は、顧客や社会のニーズを捉えて新たなサービスや顧客体験を提供することです。DXの目的を達成するためには、蓄積されたデータの有効活用が求められます。ただし、そのデータが単なる数字の羅列であれば、その意味や関連性を理解するのは困難です。蓄積してきたデータをDXで有効活用するには、データ可視化が欠かせません。
例えば、数字だけの売上データを見るのと、時系列やある条件でグラフ化された売上データを見るのでは、関係性や傾向、予測など得られる情報量が全く違います。データがグラフになっていれば、気づきを得るまでの時間が早くなります。データ可視化は迅速な判断、正しい戦略を実行する助けになります。
また、DXで活用するデータは、現状把握だけでなく、予測を立てたうえでデータを比較し、検証するというプロセスや分析作業があります。情報を素早く、正しく理解するために、データ可視化はなくてはならないのです。
データ可視化の目的とメリット
データ可視化の目的とメリットを見ていきましょう。
迅速な意思決定を支える
蓄積されたデータを、分析の用途に合わせて分かりやすく表現することで、現状把握や課題、改善点の理解や判断がスムーズになります。迅速なディスカッションや意思決定が実現できます。また、さまざまなデータを比較・検証することで、仮説・予測を立て、次のアクションに役立てることもできます。
情報共有のしやすさと業務効率化
データ可視化は情報を直感的に理解できる形で表しているので、社内共有がしやすく、共通認識を得られやすくなります。よって、意思決定の一致もスピーディーかつ適切に行われ、改善のアクションへスムーズに移行できます。
また、データ可視化は「属人的スキル」を解消することにもつながります。可視化されていないデータを、個人のスキルにまかせたデータ分析に頼ることは避けるべきです。迅速に正しい意思決定を導くには、データ可視化により、誰でもわかりやすくする必要があります。データ可視化は、データの活用を容易にし、業務の効率化を進め、属人化を防ぐことができます。
データドリブン経営に役立つ
データ可視化は、現状理解や課題の抽出に役立つだけではなく、データが表す意味を見て将来予測をすることにも役に立ちます。蓄積されたデータや関連する情報をAIで機械学習させるなどして、より高度な予測や傾向をつかむことも可能です。これを仕組化し、データに基づいた判断やアクションを起こす「データドリブン」な経営をすることが可能になります。
データ可視化が不可欠な「データドリブン」についての記事は下記からご覧ください。
データドリブンとは?活用するメリットや実行方法、事例などを紹介
データドリブン経営に活かすべき膨大なデータについては、以下の記事も参考ください。
ビッグデータとは―4つのVとメリット、考慮すべき点、活用事例など
データ可視化において注意したいこと
経営や業務で活用するデータは膨大かつ複雑です。そのデータを正しく分析し判断、共通認識を得るために利用しますが、活用方法や表現方法を誤ると、正しい情報が伝わりづらかったり、誤解を与えることにもなります。
データ可視化を行う場合、そのデータを誰に、何の目的でつたえるのか、という点を意識しましょう。
そのためには、グラフ作成のガイドラインを用意したり、視覚的に理解しやすいデザインを押さえておきます。
BIツールの中には、分析の目的に合わせたグラフを提案する製品もあります。
データ可視化のプロセス
データ可視化は通常、以下の手順で進めていきます。
- データ収集
分析の目的に合致したデータを収集します。データベース、スプレッドシート、API、ウェブスクレイピングなどのさまざまなデータソースから収集します。 - データクレンジング
収集したデータ欠損値の処理、外れ値の検出、重複排除など、分析に使えるよう、データの粒度や質を整えます。 - データ分析
データを理解し、気づきや考察を高めるために、統計的な手法や探索的データ分析(EDA)*をします。
*探索的データ分析(Exploratory Data Analysis、EDA)は、統計的手法を用いてデータセットを視覚的に探索し、その特性や構造を理解し、パターンを見つけ出す、または異常値やテスト仮説を特定するためのアプローチです。EDAは、データ分析の初期段階で行われ、後続の統計的分析や機械学習モデルの構築に向けた洞察を提供します。 - データ可視化の設計
適切なチャートの種類(棒グラフ、折れ線グラフ、散布図など)を選び、色彩、視覚的な要素の配置を決めます。 - データ可視化の実装
Tableau, PowerBIなどのBIツール、エクセルやGoogleスプレッドシートなどのノーコードベースのツールや、PythonやR言語といったデータマイニング用プログラミング言語など、適切なものを選んで行います。 - 考察と共有
作成したビジュアルから得られる情報を理解し、得られた考察を共有します。
データ可視化はDX推進を強力に支援する
データ可視化は、膨大なデータを分かりやすく表現するための重要なツールです。その特長は、データから見える現状や課題を明確に描き出すことができる点にあります。
DXではデータの活用は現状把握だけでなく、予測や検証も重要なプロセスとなります。こうした分析作業においてデータ可視化を用いることで、複雑な情報を素早く、正確に理解することが可能になります。
DX推進で成果を早期にあげるために、データ可視化を実践していきましょう。